2017年05月15日

『ことばにひそむ思い込み② ジェンダーリレー講座』

ゴールデンウィーク明けから徒歩通学を始めた娘。1週間歩いて通えました。これはそろそろ安心してよいか?でもまだ運動会やらいろいろあるからな。また行きづらくならないように油断は禁物です。

今週の新婦人しんぶん☆勝手にピックアップ☆5月18日号

『ことばにひそむ思い込み② ジェンダーリレー講座』中村桃子

 「日本語に関する思い込み」を考える二回目は、ジェンダーと年齢が関わっている「若者は敬語がうまく使えない」を取り上げる。

 敬語については、一九九〇年代からその働きが大きく変化したために、「敬語を使うべきか」に関してもいくつかの考えが混在している。それまでの敬語は、上下関係を表すものだった。一方近年では、親疎関係、つまり相手と親しいかどうか表現するために敬語が用いられるようになった。敬語を使うと相手との距離が遠くなるわけだ。これは、日本社会の変化とも関係している。経済が低迷し、終身雇用や年功序列に支えられた上下関係が崩れはじめ、さまざまな人との距離を調整しながら仕事をしていく場面が増えたのだ。

 それでは、若者が敬語をまったく放棄してしまったかというと、そうではない。むしろ、現代社会にあった形の新しい敬語を作り出している。それが、「です」を「す」に縮めた「そうッスね」である。敬語が相手との距離を表すようになってしまった。それでも相手に対する敬意を表したい時の苦肉の策が「す」である。(詳しくは、拙書『性と日本語―言葉が作る女と男』NHKブックス)。

 実際、私が録音した、大学の体育会系クラブ男子の会話では、親しく話しているように見えて。後輩は先輩には必ず「す」を付け、先輩は後輩に絶対に「す」を使わない。ものすごく早く話しているのに、後輩が「す」で発言を終えた瞬間に、先輩がその後輩を見て返事をする。大学の体育クラブという狭い世界に限れば、若者は「敬語がうまく使えない」どころか、「す」に関しては敬語のエキスパートだ。

 一方で、「す」を正当な敬語と認めない人たちも多い。特に、職場で「マジっすか」のように若者ことばと一緒に使うと問題視される。

 今後「す」がどのように受け入れられていくかは未定だが、少なくとも若い男性は「ことばによって相手に対する敬意を示す」という意識は十分持っていると言える。