2019年05月06日

『有休年5日取得の義務化 人間らしく働くために』

 長かった10連休が終ろうとしています。連休明けはだれしも会社、学校へ行くのが憂鬱になるもの。ましてや10連休にもなれば…。重症学校行きたくない病の娘の先駆けて、会社行きたくない病の夫は今日から仕事。「明日は娘と息子二人で学校行きたくないと泣くんだろうから、君は泣かずに会社に行けよ?」と言うと「俺は『行きたくない』とは言うけど泣かんもん!」だって。これは褒めるべきなのかな。明日の学校始まり、どれだけ手こずるか…ちょっとため息が出そう。

今週の新婦人しんぶん☆勝手にピックアップ☆5月9日号

『有休年5日取得の義務化 人間らしく働くために』 弁護士 青龍美和子

 年次有給休暇(有休)は、単に労働からの解放や労働者の疲労回復のためではありません。労働者の人間らしい生活を保障し、人間としての尊厳を積極的に維持確保することを目的としています。

 有休は、雇い入れの日から起算して6カ月以上継続して勤務し、ぜん所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して.、1年に10労働日の休暇(雇用主が賃金を払う)が法律上付与されます。その後、継続勤務年数1年ごとに日数が付与されます。

 パートタイム労働者も、①所定労働日数が5日以上の人②所定労働日数が年217日以上の人③週4日以下でも所定労働時間が週30時間以上の人には、通常の労働者と同じ有休日数を取得する権利があります(労働法39条3項)

 使用者は、労働者が有休を取得することを妨げてはならないとされています。使用者には、労働者が希望する時期に有休が取得できるよう配慮すべき義務があり、その際の人員配置や業務の差し繰りができる体制を確保しなければなりません。

 「事業の正常な運営を妨げる場合」以外は、労働者が有給で休みたいと思う日に自由に休んでよいのです。労働者の側に「時期指定権」があります。

 有休をとる理由も、使用者に告知する必要はありません。休暇中に何をしようが労働者の勝手です。どんな目的でも有休を取得できます。

 しかし実際は、労働者からの申告が必要で、「病気や休養の時の備え」「同僚への遠慮」「人員不足」等から、有休を取得しにくい状況があるのも事実です。2017年就労条件総合調査の概況(厚労省)では、2016年(または2015年会計年度)1年間に企業が付与した有休日数(繰り越し日数は除く)は労働者1人平均18.2日、そのうち取得日数は9.0日で。取得率は49.4%です。

 昨年6月に成立した「働き方改革」関連一括法案に労働時間の「規制」の名で過労死を増やす高度プロフェッショナル制度の導入などが定められました。一方で、年次有給休暇の義務化が盛り込まれたのです。

 この4月から、大企業では守らなければならないルールになり(中小企業は2020年4月から)使用者は、有休10日以上付与される労働者(パート労働者も含む)を対象に、1年間に最低5日の有休を取得させなければならなくなりました。

 使用者は、有休を取得させるにあたって、あらかじめ労働者の意見を聴取しなければならず、その意見を尊重して、労働者ごとに時期を指定して有休を付与する義務があります。違反すると罰則があるのです(30万以下の罰金)。有休の管理簿を作成して、3年間保存しなければなりません。

 今回の改正は、有休の取得率が低いことに対応して設けられた最低限の基準です。労働組合のある職場では、決定の5日の義務的な取得に満足せず、100%の取得を目指すべきです。一方で、不測の事態に備え、有休をためておく労働者が一定数いるという実態があります。有休とは別に、病気などに対応した特別の有休制度創設など実現しましょう。

 労働者は有休が10日以上発生する場合には、使用者が一方的に有休の日を指定する前に、5日以上の有休を取得すべきです。自分であらかじめ休む日を決めておいた方が好きなときに休めます。5日以上有休を使えば、使用者が時期指定を行使することもできなくなります。職場の仲間と有休の取得時季について話し合い、意見をまとめて使用者に提出できればよいと思います。

 有休が5日義務化されただけで喜んではいられません。

 世界人権宣言(1948年)は、すべての人に対し「労働時間の合理的な制限」と「定期的な有給休暇」を含む「休息及び余暇をもつ権利」の保障(24条)を宣言しており、この内容は国際人権規約A規約7条に受け継がれています。ILO
(国際労働機関)も1970年に「有給休暇に関する条約」を採択しています。(日本は未批准)「有休日数はいかなる場合にも1年の勤務につき3労働(週5日制なら15日、6日制なら18日)を下回ってはならない(3条3項)、そのうち少なくとも2労働週は一括付与すべきこと(8条2項)を定め、日本のような恩恵的な有休日数の漸増を認めていません。人間らしさを回復(リフレッシュ)する必要性は勤務時間や勤続年数に関係なく、健康的に休息をとることにこそ意義があります。

 連続した長期の有休がとれるようになるため、がんばりましょう。