2018年12月03日

『性教育は今③ 道徳教科書をジェンダー視点で読む下』

 小学校の行事が日曜にあったおかげで、日曜にお弁当作り…。そのせいかネットニュースのお弁当関連の記事が目につき、愛情弁当=お母さんの手作り。ジェンダーだなあ…ということでこれはタイムリーな記事かな。

今週の新婦人しんぶん☆勝手にピックアップ☆12月6日号

『性教育は今③ 道徳教科書をジェンダー視点で読む下』

 前回、中学の道徳教科書について問題点を3点指摘しました。四つ目は、女性性を仕事やボランティアに利用する描かれ方が見られることです。

 たとえば、保健師や看護師など女性に割り当てられたケア労働と地続きの職種で、犠牲的奉仕の精神が賛美されています。(ふきのとう:学芸図書2年など)。末尾には「勤労は社会に貢献する尊い行い」との説明がありますが、労働ではなく勤労と表現され、現実の保健師、助産師、看護師の労働状況にはまったくふれないで、社会貢献の側面だけが強調されています。さらに、アルバイトで忙しくて弁当をつくる余裕がない高校生の主人公を見かねた友人の母親が、お弁当を毎日作ってくれたという教材(黄色いお弁当箱:学芸図書3年)があります。「思いやりに感謝し、応える心」という徳目の下で、学校給食などの社会システムの問題にはふれず、女性(母親)の無私、無欲の思いやり、やさしさの問題にすり替えられています。

 五つ目は、労働に関して、性別を超えた職業選択など、子どもたちのロールモデルになる教材もありますが、多くは労働が勤労奉仕に矮小化されています。

 例えば、84歳の高齢女性が真夜中に新聞のチラシの折り込みに行き、配達・集金もするという過酷な労働を〝届ける人”のあたりまえの責任として説明し、仕事は尊いとする(午前1時40分:あかつき1年)など、自らの体を丸ごと「人間資本」として活用することを求める新自由主義的勤労観が見られます。

 さらに、同じ清掃の仕事を扱った教材でも、家事育児担当者とされてきた女性の場合は「心をこめて」とか、優しさという形で、仕事への傾注を引き出そうとします(私は清掃のプロになる:文教1年など)。しかし、男性主人公には、清掃も「もてなしの一部」と定義を転換して、仕事への情熱をかき立てる話があてがわれる(掃除の神様が教えてくれたこと:学研1年)というジェンダー格差が見られます。

 以上のような、日本のジェンダー平等やセクシュアリティ教育の遅れの原因や今後の課題について、次回以降に展開します。